2014.12/05 [Fri]
FCRキャブレターのオーバーホール&チューニング
現在では、CRキャブレター専門のように認識されている私ですが、FCRキャブレター発売当初から20年余にわたって使い続けたFCRマニア・・・
そういう意味では、CRキャブレターをいじるようになってからは6年ほどですので、向き合ってきた期間で言えば、FCRキャブレターの方がはるかに長いということになります。
まあ、色々なことをFCRキャブレターでもやってきました。
ただ、これを仕事として請け負うということになると、ちょっと悩ましいことがいくつかあることで、あまりFCRキャブレターに積極的ではないのです。
まあ、そのことについてはあとで触れることにしましょうね。
今回、4連FCR39のオーバーホールとリターンスプリング交換作業を依頼されましたのでご紹介しましょう。
FCRユーザーは多数おられると思いますので、使用上の注意点という観点からもお読みください。
分解中です。

FCRキャブレターの留意点としてまず挙げられるのが、この浮動バルブ(背圧バランスバルブ)の摩耗です。
ここは、エンジンの吸入負圧と脈動によって、ボディー内壁に叩きつけられるように摺動しているところですので、摩耗しやすいのです。
FCRキャブレターが発する「カチャカチャ」という独特の音は、この浮動バルブ(背圧バランスバルブ)が吸入負圧の脈動に踊らされてボディーに叩きつけられている音なのです。
アイドリング時を中心に、スロットル開度が小さな時の方がインマニ内の吸入負圧値が大きいですので、浮動バルブ(背圧バランスバルブ)の摩耗も下端部分を中心に進みます。

浮動バルブ(背圧バランスバルブ)には、摺動性を上げるためにテフロンコーティングがかけられていますが、これは走行を重ねるごとに剥がれていきます。
ちょっと高価な部品ですが、まあ、これくらいならもうちょっと使えますか・・・
次のオーバーホール時には交換ですね。
ちなみに部品価格は、4枚で24,600円もします。

最も心配なのは、ボディーの摩耗です。
FCRのスロットルバルブはベアリング内臓のローラーによって支持されていますが、このローラーはボディー内壁上を転がるように作動しています。
そこで、このベアリングの動きが渋くなったりすると、転がらずに滑るようになりますので、それがボディーの摩耗を急速に促進するのです。
そもそも摩耗に弱いFCRキャブレターにおいては、スロットルバルブ周りを常にクリーンな状態に維持することが最も重要なこととなります。
ファンネルのままで走行してメンテナンスもなにもしないとなれば、あっという間に摩耗して使用不能のゴミと化してしまいます。
ボディーの摩耗が一定以上まで進んだFCRキャブレターは、使用不能、ゴミ同然・・・そうならないためにも、エアクリーナー使用とこまめなメンテナンスを欠かしてはならないのです。そしてこの摩耗は、CRキャブレターやTMRキャブレターなどと比較しても、はるかに進行しやすいのがFCRキャブレターの宿命です。まあ、多くの人が思っている以上に消耗部品ということです。
このボディーは問題ありません。ちなみに使用期間は約3年、距離は5,000~6,000km、K&Nのフィルター使用です。

ボディーや浮動バルブ(背圧バランスバルブ)の摩耗による劣化は徐々に進行しますので、それによるヘタリ感、パフォーマンスの落ち具合というのはなかなか体感し難い部分があります。
回転落ちが悪いとか、アイドリング近辺が不安定でバラつき感があるとか、始動性が悪くなったとか・・・
「どうも最近パリッとしないな・・・セッティングが合わなくなったのか、同調がズレたのか、はたまた点火系かな?」
などと思っていたら、実のところFCRキャブレターの摩耗劣化だったなどというのは十分に考えられるケースです。
1989年にリリースされたFCRキャブレター、基本的には当時のままのスペックで製作されていますが、細かい部分は仕様変更も受けています。
そのひとつが、リターンスプリングのレートアップです。
まあ、安全率向上のため、戻りに対するマージンを上げたということなのですが、どうもその背景には、戻り側のスロットルワイヤーを付けずに使用してスロットルの戻りが悪くなったという、ユーザー側の問題があったらしい・・・
このFCRキャブレターも、現行の標準スプリングである、通称120%のリターンスプリングが組み込まれていましたので、これを100%スプリングに変更します。
このほかにも、当時のレースユーザーからの、もっとスロットルを軽くしたいという要望から、75%というスプリングも存在します。相当に軽くなりますし、私はこれを愛用していますが、使用にあたっては、スロットルリンケージやスロットルワイヤー、スロットルホルダーの設定やメンテナンス調整に細心の注意を払う必要がありますので、あまり一般的ではありませんね。でも驚くほどに軽くなるのも事実です。
向かって左側が現行標準の120%、右側が75%です。
今回は、オーナーの指定によって、この中間である100%を使います。

FCRキャブレターをオーバーホールする際には、スロットルシャフト及び同ベアリングに、特殊グリスであるバリエルタを塗布することが指定されています。
相当に高価なものなのですが、きちんとしたオーバーホールをするには必須のものとなります。


さて、これがFCRキャブレターにおける勘所の柱です。
そう、浮動バルブ(背圧バランスバルブ)シールです。
ご存じのとおり、FCRキャブレターのスロットルバルブはベアリングローラーによって支持されていますが、それはすなわち、スロットルバルブとボディー内壁が直接摺動しない、いや、正確に言えば、エアリークをシールできるほどの密閉性を持たないということを意味します。
これでは、スロットル開度が少ない領域において二次エアーの吸入量が多くなり過ぎてしまい、気化器としての機能を果たすことができなくなるのです。
FCRキャブレターの原型となったレース専用のフラットバルブキャブレターでは、このスロットルバルブとボディー間のエアリーク量を抑制コントロールするために、ボディーひとつずつについてシムを入れてこのクリアランスを0.2mm前後に調整するという方法を採っていましたが、これは優れたメカニックが手作業で行うことが前提の構造だったというわけです。
量産汎用レーシングパーツであるFCRキャブレターではそんなことをするわけにはいきませんが、そこで考え出されたのが、スロットルバルブをメインとサブの2枚構造にして、その間にエンジンの吸入負圧を導入し、それによってサブ側をボディーに吸い付けることでエアリークを防ぐという方法です。
そして、2枚の間には双方を密閉するためのシールが挿入されています。
そう、サブ側が浮動バルブ(背圧バランスバルブ)シールが浮動バルブ(背圧バランスバルブ)シールというわけです。
このシールがヘタったりすれば、ベアリング支持されたメインスロットルバルブと浮動バルブ(背圧バランスバルブ)の密閉性が保持できなくなり、二次エアーを吸ってしまうということになるのです。
ちなみにこのシール、ケーヒンの指定では、毎シーズンごとに交換ということになっています。それくらい、FCRがキャブレターとして機能するためには重要なものということです。

交換の前後において、どれくらいの違いがあるのか、動画にてご覧ください。
交換前のものは、シールの反発力が完全に失われているのがわかりますね。
これでは、浮動バルブ(背圧バランスバルブ)がきちんと機能することはできません。
さて、各ボディーの平行と垂直に注意しながら連結作業を行い、スロットルバルブとリンク周りも組み立てをしました。
ここで注意しなくてはならないことが、リンクアームとスロットルバルブのスラストクリアランス調整です。
画像のように、各開度において、リンクアームとスロットルバルブの干渉がないように調整します。ここが競ってしまうと、とたんに重く渋いものになってしまうのです。

各部の調整も済ませ、これで完成です。
ただ組むだけなら簡単な作業ですが、きちんと組むのはけっこう難しいんですよ。


そうそう、もうひとつ忘れていました。
加速ポンプのダイヤフラムも新品に交換しましょう。
TMRのようなプランジャー式加速ポンプなら心配ないのですが、ダイヤフラム式の場合には、これの弾力性が落ちると、とたんに吐出量が減ってしまいます。
意外と知られていないんですよね・・・

ファクトリーまめしばでは、FCRキャブレターのオーバーホールも受け付けしないことはないのですが、お受けするには条件があります。
まず、ボディーが摩耗している場合、それはいくらオーバーホールしても修復することはできません。そして、摩耗が限度を超えているのかどうかは分解してみないとわからないというところが悩ましいところです。
分解して使えないことが判明した場合、厳しい現実をお伝えすることになる可能性があることを認識ください。
また、FCRキャブレターの各構成部品は極めて高価です。
浮動バルブ(背圧バランスバルブ)は4枚で24,600円、メインスロットルバルブは4個で56,600円もします。これらの摩耗が進んでいて交換が必要になったとしたら、その部品代だけで81,200円です。
その他、Oリングやガスケット代、そしてオーバーホール工賃が加算されると、もう新品が買える値段になってしまいます。
なので、FCRキャブレターは消耗品なのです。
少しでも長持ちさせようと思ったら、早めのオーバーホールメンテナンスとこまめなクリーンアップ、そしてエアクリーナーの使用です。
オーバーホールをご希望の方は、上記のことをご理解の上でご連絡ください。
また、症状だけをお聞きして正確な判断をすることはできません。分解しなくてはわからないのです。
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