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GS750のエンジンオーバーホール計画 その4~純正リングの合口隙間を確認


過去にこんなことを書きました。

ピストンリングの合口隙間は、可能な限り狭いほど良いのです。もし、なくても成立するのであれば、ない方がいい・・・
合口隙間を設けなくても良いような、シームレス、つまり、切れ目のない一体型のピストンリングを発明したら、それは、まさに革命と言っていいほどのエポックになるはずです。

詳しい内容はこの記事をお読みください。
必読です。
ピストンリング合口隙間とピストンクリアランス

エンジンの効率を高めるための要素は多岐にわたりますが、混合気の燃焼によって生じた燃焼圧力が、ピストンとシリンダーの間からすり抜けてしまうとしたら、それは相当なパワーロスになります。
この、燃焼ガス吹き抜けをいかに少なく抑えるか、それはピストンリングメーカーが最大の命題として長年にわたって追求し続けてきたテーマだったのです。
解析の結果、最も多く吹き抜けている場所は、ピストンリングの合口隙間であることがわかっています。
良く考えてみてください。バルブの摺合せやシートカットなどを行う目的は何でしょうか。
髪の毛1本ほどの隙間どころか、ポートから液体を流し込んでも、それを完全にシャットアウトできるほどの密閉性を得るために、相当の労力とコストを投じる・・・それがバルブ摺合せやシートカットという作業です。
にもかかわらず、構造上、一定の隙間を設けなくてはならないとはいえ、コンマ数ミリほどの大きな隙間があるのがリング合口です。こんな隙間があるのですから、実のところ、バンバン吹き抜けているというのが現実・・・だからこそ、ここにもっと神経を遣って狭い隙間を管理することができれば、ロスを大きく低減することができるのです。

量産エンジンにおいては、バルブ摺合せなどという工程は存在しません。
しかし、車両メーカーは、下請け部品メーカーであるリングメーカーには、実に厳しい公差管理を求め、この合口隙間を緻密に管理しています。
その理由は、燃焼ガスをシールするという目的に対する費用対効果という意味において、バルブ摺合せよりも、リング合口隙間を可能な限り狭く管理することにメリットがあるからです。

つまり、エンジン作業、特にチューニングなどということをしようとした場合、バルブ摺合せやシートカットなどということよりも、リング合口隙間をきちんと管理することの方が優先順位は高いということになります。もちろん、両方やるに越したことはありませんが・・・

そこで悩ましいのは、摺合せやシートカットは内燃機屋に頼めばきちんとやってくれる、つまり現実的に可能なことであるのに対し、リング合口隙間を管理するというのは、なかなか現実的ではない側面を有します。
これから組付けようとするピストンに対して、必要なピストンクリアランスを得るためにシリンダー内径を仕上げれば、そこに入るピストンリングの合口隙間は、削って広げることはできても狭くすることは不可能だから・・・

社外品のピストンキットを使ったオーバーホールやチューニングの場合がこれに当てはまります。
キット付属のリングを使うしかありませんので、たとえば、キット指定のクリアランスでボーリングした結果、0.4mm程度も隙間が空いていたら、それはそのまま使うしか選択肢がないということになります。仮に、この隙間がピストンキットの指定値であったとしても、それは客観的には広すぎるという事実に変わりはないのです。
ボア径60~80mm程度に対して0.4mmほどの合口隙間、たとえばナラシもせずにいきなり全開という前提であれば選択の理由がないでもないですが、長期間にわたって使うのであれば広すぎ・・・燃焼ガスの吹き抜けは相当に多いでしょうし、それが走行を重ねることで摩耗すれば、それは増加する一方となります。




今回のGS750エンジンオーバーホールに使うドナーエンジン、走行距離不明の中古品です。程度はなかなか良いものなのですが、そうは言っても、各部の摩耗程度を見ても、数万kmほどは走行しているものと思いますし、製造そのものも30年以上前のこととなります。
さて、このエンジンのピストンリングはどのような摩耗程度を示しているのか、それを確認してみることにしましょう。

これは、摘出したノーマルピストンです。

P1090364.jpg






ピストンからリングを外します。

P1090365.jpg






計測作業の前に、サービスマニュアルにて標準値(新品リング&シリンダーでの値)と限度値を確認しておきましょう。
・標準値 0.1~0.3mm
・限度値 0.6mm

P1090363.jpg





ここでまずわかることがあります。
GS750エンジンが設計されたのは約40年前ですが、その時点でも、0.1~0.3mmという合口隙間を狙って管理しようとしていたという事実・・・
量産品の隙間を狭く管理するということは、公差管理を厳しくすることを意味します。スズキは、このリングを製作させたリングメーカーに、相応のコストを払うことでこの合口隙間を得たということです。もっとルーズで良いのなら、安く作れるのにね・・・
社外品ピストンの指定隙間が広いのは、それが理想値ということではなく、コストの問題です。まあ、大メーカーとアフターマーケットピストンメーカーに対するリングメーカーの仕切り価格は雲泥の差ですから、それも仕方ないと言えばそうですけれどね。

ちなみにこれは、1994年式GSX1100S刀のサービスマニュアルに記載された値です。
まあ、同じということ・・・

P1090362.jpg







各シリンダーにリングを挿入します。このとき、傾いたりすれば正確な合口隙間を計測することができなくなりますので、ピストンをジグ代わりにしてまっすぐに挿入します。
また、本来の計測場所は、シリンダー摩耗がないスカート部分にて行うのがマニュアルの指定ですが、ここはあえて、最も摩耗が進むシリンダー上方にて行いました。
リング、シリンダー双方の摩耗によって、距離を重ねたこのエンジンにおける合口隙間が、先のマニュアル指定値に対してどれくらい広がっているのかを確認するというのが今回の検証です。

P1090380.jpg






目視ではこの程度です。

P1090381.jpg






シックネスゲージを使って計測してみましょう。
まずは標準値である0.3mmのゲージを使ってみると・・・入りません。

P1090377.jpg






全てのシリンダーを計測した結果です。
1番:0.24 2番:0.25 3番:0.24 4番:0.27
これが、純正部品の実力・・・お見事としか言いようがありません。

P1090390.jpg







さて、次はピストンリングそのものを見ながら、その品質を推し量るための一要素について書いてみましょう。
国内に、ピストンリングメーカーは3社ほどありますが、なんと言ってもトップメーカーはリケンです。また、同じメーカー製だと言っても、実際に製作されているリングには松竹梅があるのも当然のことです。
材質、製法、熱処理、表面処理、公差管理etc・・・

この、GS750エンジンに使われているのは、リケン製でした。
RNと刻印されているのがわかりますね。
Nなら日本ピストンリング、Tなら帝国ピストンリングです。

P1090368.jpg







当然のことですが、リングはシリンダー内壁と摺動することで摩耗して行きます。
この摩耗は、エンジンへたりの主役級ですので、リングに求められる要素としては、とにかく減らないというのが重要なこととなります。
また、トップリングとセカンドリングでは摺動面の形状が異なりますので、それぞれの減り方も異なりますし、この減り方を見ることで、そのリングの品質レベルがある程度はわかるのです。
なんのことはない、安物は早く減ってへたるのも早いということ・・・
トップリングは摺動面にメッキ処理されたものが多いですので、比較的摩耗は遅いのですが、通常のセカンドリングにはメッキ処理されていませんので、そこで摩耗が問題になります。ちなみに、グレードの高いものはセカンドリングにもメッキ処理されていますけれどね・・・それが「松クラス」のリングということ・・・

向かって左側がトップリング、右側がセカンドリングです。
トップリングの摺動面はアール形状、つまり丸い当たり面を持っていますので、摩耗はアールの頂点が平らになっていくという減り方をします。このトップリングも、アールの頂点部分がやや平らになっていますので、それなりに摩耗しているということです。
これがもっと進むと、アール部分が完全に平らになり、全面フラットなベタ当たり状態になってしまいます。
セカンドリングは、下部に向かって末広がりのテーパー形状になっているものがほとんどです。これで余分なオイルを掻き落とすためですが、この形状から、摩耗は下部当たり面から始まります。これを見るとわかるとおり、リング当たり面の上部分はシリンダー内壁と当たっていない反面、下部は当たって摩耗し、光っているのがわかります。これも同様に、摩耗が進むと全面ベタ当たりになってしまいます。

P1090383.jpg







クォリティーの低いリングは、1万km程度の走行でも、特にセカンドリングが全面ベタ当たりになってしまいます。そうなると、オイルを掻き落とす能力が激減しますので、シリンダーの摩耗がさほどでもないとしても、激しいオイル上がりに見舞われます。
トップリングの摩耗が進むと、ガスシール性がひどく低下しますので、圧縮落ちや燃焼ガス漏れによるパワーロスが多くなります。

上の画像ではわかり難いかも知れませんね。微妙な摩耗程度ですので、撮影の光加減によってうまく画像表現できないのです。
以下に、複数枚の画像を掲載しますので、それぞれのリング当たり面について、じっくりと観察してください。
トップリングはアール形状なので、アール頂点が平らになるように摩耗します。
セカンドリングは下方に向かって末広がりのテーパー形状ですので、下部から摩耗が進みます。
いずれも、全面ベタ当たりになってしまったら、リングとしての機能を失います。
そしてこのことは、材質、製法、熱処理、表面処理などに大きく左右される・・・つまり、良いものは減らない、安いものは減る・・・単純にそういうことです。

P1090386.jpg

P1090389.jpg







ご覧のとおり、このリングはまだまだ機能を保持している状態です。
推定では数万kmを走行しているにもかかわらず、その摩耗程度は十分に許容範囲内にあるということ・・・
しかし、社外品ハイコンプピストンとして販売されているものに付属のリング、その全てとは言いませんが、1万~2万km程度の走行でベタ当たりになってしまうものも存在するというのが現実です。

このような合口隙間管理の問題、摩耗の問題、それはピストンリングに求められる機能の本質部分にかかわるところであり、エンジンの耐久性や信頼性を大きく左右する部分なのです。
そういう意味においては、とりあえず最も信頼できるのは純正リングということになってしまうのですが・・・さて・・・






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